川久保賜紀ヴァイオリンリサイタル
2015-05-23


2015年5月9日、越谷のサンシティホール(小ホール)で行われた、第154回ティータイムコンサートに行ってきた。川久保賜紀のヴァイオリンと江口玲のピアノである。曲目は次の通り。

・クライスラー:プレリュードとアレグロ
・クライスラー:美しきロスマリン
・クライスラー:中国の太鼓
・ベートーヴェン:ヴァイオリンソナタ第5番ヘ長調 Op.24「春」
(休憩)
・武満徹:妖精の距離
・シューマン/リスト編: 献呈*
・スーク: 愛の歌 作品7-1*
・バルトーク:ルーマニア民族舞曲
・サラサーテ:アンダルシアのロマンス Op.22-1
・ラヴェル:ツィガーヌ

(* は江口さんのピアノソロ)

こう書いてしまうと申し訳ないのだが、私が一番期待していたのは冒頭のクライスラーの小品3曲だった。なかなかヴァイオリンの小品というのは実演では聴けないからだ。極端かもしれないが、ラヴェルのツィガーヌとかフランクのソナタのほうがよく聴いているかもしれない。もちろん、ツィガーヌもフランクのソナタも好きだが、やはりクライスラーの曲は好きだから聴きたい。

中国の太鼓やプレリュードとアレグロは実演で初めて聴いた。いやあ、やはりクライスラーは面白い曲を書く面白い人だ。ヴァイオリンとピアノの音を楽しみながら、クライスラーの作品の著作権はもう切れたのだろうか、と下世話なことを考えていた。

その後でベートーヴェンの「春」である。第2楽章あたりから「春眠暁を覚えず」状態になってしまってお二人には申し訳なかったが、タイトルの力ということでご了解願いたい。

後半の武満は面白かったが、このティータイムコンサートで聴ける現代曲の過半数が武満なのが気になる。もっと過激な音楽に遭いたい、とも思う。

江口さんのソロの初めを聴いて、ピアノの音色が独特な響きを広げていたことを認識したのだった。どうやら、1887年製ニューヨーク・スタインウェイ、通称「ローズウッド」らしい。名前からわかるとおり、黒塗りではない。今のピアノに代表される金属的な響きではなく、極端に言えば木魚のような響きのピアノがシューマン=リストによく合っていた。しかし、ソロになって初めて気づくとは鈍くなったものだ。

ピアノの音色は、ツィガーヌでいかんなく発揮されていたようだ。この民族的な雰囲気を持つ曲にぴったりだった。

アンコールは、クライスラーの「愛の悲しみ」だった。アンコール予想当てクイズを自分で回答するのだが、たぶん三部作の残りのどちらかだろうという予想が当たったのには自分でも驚いた。ピアノの江口さんが、メロディーを繰り返し部分でヴァイオリンと後退させて「奪って」いるのに気付き、ほほえましくなった。

川久保さんのヴァイオリンに全く触れなかったのは申し訳ない。のびやかで艶のある、美しい音色を奏でたヴァイオリンだった。
[室内楽]
[演奏会]

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