モーツァルトのヴァイオリンとピアノのためのソナタ(総論)
2008-03-30


機会があって、モーツァルトのヴァイオリンとピアノのためのソナタのピアノ譜を練習することにした。

まず、モーツァルトのヴァイオリンとピアノのためのソナタ一般について思うところを述べる。

モーツァルトのヴァイオリンとピアノのためのソナタは、実はピアノソナタのヴァイオリンオブリガート付だ、と言われることが多い。今まではそれを鵜呑みにしていたが、最近ちょっと違うのではないか、と思うようになった。

違うというのは、ヴァイオリンとピアノの比重のことである。モーツァルトのヴァイオリンとピアノのためのソナタでは、ヴァイオリンの比重が軽いかもしれないが、それをオブリガートといってはヴァイオリンの存在価値が問われてしまう。オブリガートではなく、ヴァイオリンもピアノと同格の、れっきとした合奏パートなのである。

同じことは、モーツァルト以外のヴァイオリンとピアノのためのソナタにも逆の意味でいえる。通常、日本ではヴァイオリンソナタといっている楽曲は正確にはヴァイオリンとピアノのためのソナタであり、ヴァイオリンもピアノも対等な立場にある。

あるヴァイオリニストのリサイタルで、プログラムにブラームスのヴァイオリンとピアノのためのソナタ第1番(雨の歌)があった。このとき、ヴァイオリニストはもちろんのことだが、ピアニストも暗譜で演奏していた。対等な立場を強調してのことと聞いている。一方、同じリサイタルで、ソナタでない、ヴァイオリンが活躍する小品では、ピアニストは楽譜を置いていた。

ということで、私はモーツァルトのヴァイオリンとピアノのためのソナタをヴァイオリンソナタとは書かない方針を通そうと思う。比重がピアノ寄りという意味では、ピアノとヴァイオリンのためのソナタ、というのがよいとと思うこともある(事実この標記が一般的だ)。ピアノを後にもってきたのは、ヴァイオリンへの敬意を表すためである。
[室内楽]

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